「谷戸」知っていますか多摩丘陵などで見られる浅い谷状の地形「谷戸(やと)」の成り立ちと人の暮らしの関わりを知る企画展「谷戸のおはなし~多摩の大地に刻まれたシワ~」が、多摩市のパルテノン多摩で開かれている。 谷戸は、丘陵や台地と平地の境界などに見られる浅くて細長い谷状の地形。航空写真では、雑木林の合間を縫うように細かいひだが刻まれて見える。担当学芸員の仙仁径(せんにけい)さんは「地殻変動などの影響を受けてできた世界的に見ても珍しい地形」と話す。 谷戸にある谷間の平地に作られた「谷戸田」では稲作が行われるとともに、湧水・湿地や雑木林が一体となって里山となった。ここでは絶滅危惧種のホトケドジョウや多種類のトンボ、ゲンゴロウの仲間が暮らしており、近年は生物多様性の視点からも、貴重な環境として見直されている。 多摩丘陵の際にあたる町田市小野路町や、埼玉県にまたがる狭山丘陵の南北の一部に見られるが、多摩ニュータウンなどの開発で消えたエリアも多い。多摩市内では、団地の間に走る車道に地形的な名残がある。 企画展では計52点のパネルと写真のほか、多摩モノレール・多摩センター駅付近で発見された貝の化石などを展示。多摩丘陵が穏やかな海だった時代から、浸食や地殻変動を繰り返して谷戸が形成されるまでの長い歴史を解説する。各パネルにはロシアの入れ子人形・マトリョーシカをもじったキャラクター「ヤトリョーシカ」の家族が登場し、〈谷戸はすくなくなったけど、たまにバス停とかに谷戸の名前がついているよ!〉などとコメントしている。 また、関東圏では「谷津」、東北地方では「谷地」など、各地方での谷戸の呼び名の違いや地名への影響についても解説。多摩市の「谷戸マップ」作製を目的に、来場者に地域独自の呼び名などを書き込んでもらうための地形図も置いた。「世代を問わず、楽しく学べる工夫をした。多摩の自然を足元から見直すきっかけにしてほしい」と仙仁さん。 3月10日まで。問い合わせはパルテノン多摩(042・375・1414)へ。 (2013年12月15日 読売新聞) |