最古級の日本刀、なぜ天井裏に?春日大社、80年前発見
宮崎亮
2018年1月22日23時53分 朝日
最古級の日本刀と推定される古伯耆=22日午後、奈良市の春日大社、筋野健太撮影
最古級の日本刀と推定される古伯耆を持つ学芸員=22日午後、奈良市の春日大社、筋野健太撮影
戦前、奈良・春日大社の宝庫の天井裏で発見された太刀が、約80年たって、さびを落として修理を施したところ、最古級の日本刀だったことが分かった。刀身は12世紀の平安時代後期の作とみられるが、鞘(さや)や柄(つか)などの外装は14~15世紀に作られた可能性が高い。そんな貴重な刀が、なぜ天井裏で保管されてきたのか。
奈良・春日大社に最古級の日本刀 平安後期「安綱」作か
刀は「古伯耆(こほうき)」と呼ばれる最古級の日本刀とみられ、現存する同時期の太刀の中でも異例の長寸だ。刀が作られたとされる伯耆国(現鳥取県中西部)は古くから製鉄が盛んで、刀の産地としても知られてきた。
1939(昭和14)年、春日大社の宝庫を解体修理した際に天井裏から見つかったものだった。なぜ天井裏にあったのか。春日大社にもその理由は分からないといい、なぞは深まるばかりだ。
春日大社国宝殿の荒井清志学芸員によれば、刀身は使われたり研がれたりした痕跡はなく、ほぼ作られた当時の状態を残していた。ただ、持ち手の部分には加工した痕跡があり、以前は別の外装だった可能性がある。
この刀は「黒漆山金作太刀(くろうるしやまがねづくりたち)拵(こしらえ)」と呼ばれる、中世の武士が身につける刀の外装に納められていた。だが、外装と刀身の作られた時期には開きがある。荒井さんは「刀は持ち主が自分の好みで加工する。時代の流行に合わせて外装も変えたのではないか。最古級の日本刀がほぼ手を加えられない状態で、奉納から500~600年間残っていたことは意義深い」と話す。
春日大社は奈良時代に創建されて以来、公家・武家の崇敬を集めてきた。宝庫は武家から奉納された刀やよろいなどが納められたとみられるが、1382年に炎上した記録があり、今回の刀の奉納時期はこの火災以降だったとみられる。
春日大社は2016年から、人間国宝の本阿弥光洲さんに依頼して、天井裏から発見された太刀を順次研磨してきた。(宮崎亮)
奈良・春日大社に最古級の日本刀 平安後期「安綱」作か
宮崎亮
2018年1月22日18時07分
最古級の日本刀と推定される古伯耆=22日午後、奈良市の春日大社、筋野健太撮影
最古級の日本刀と推定される古伯耆について発表する花山院弘匡・春日大社宮司(左端)ら=22日午後、奈良市の春日大社、筋野健太撮影
奈良・春日大社が所蔵する太刀について、12世紀の平安時代後期につくられた「古伯耆(こほうき)」と呼ばれる最古級の日本刀だったことが分かった。春日大社が22日発表した。平安時代から武家に伝わる「伝家の宝刀」が、南北朝~室町時代初め(14~15世紀)に大社に奉納されたとみられ、日本刀の歴史を考える上で重要な資料として注目される。
最古級の日本刀、なぜ天井裏に?春日大社、80年前発見
日本の刀剣は、古代遺跡での出土品や正倉院宝物などにみられる反りのない「直刀」から、平安後期に反りなどの付いた現在の日本刀の形が成立。伯耆国(現鳥取県中西部)で作られた「古伯耆」などが最初期のものとされる。
刀は無銘で、刃の長さが82・4センチ。鞘(さや)などの外装は南北朝~室町時代に作られた黒漆山金作太刀拵(くろうるしやまがねづくりたちこしらえ)とされる。大社によると、刃文の特徴などから古伯耆の中でも最古とみられる刀工「安綱(やすつな)」の作の可能性がある。このほかに古伯耆は十数点の国宝・重要文化財がある。東京国立博物館の酒井元樹主任研究員(日本工芸史)は「これだけ長寸の古伯耆で、外装も残っているのは珍しい」と話す。
太刀は1939(昭和14)年、宝庫天井裏から発見された12振りのうちの1振り。刀身がさびていたので詳細が不明だったが、2016年度から第60次式年造替(しきねんぞうたい)を記念して研磨したことで詳細が判明した。
刀は30日から、春日大社国宝殿で展示される。3月26日まで。問い合わせは大社(0742・22・7788)へ。(宮崎亮)