18耳んだれさま
昔はお医者様も少く、ちょっとぐらいの病気ではなかなか診てもらうことができなかったものです。そこで勢い神仏やおまじないを頼ることになりました。
芋窪の鹿島様の境内に「耳んだれさま」と言われる小さな神様がありました。今で言えば、西側の道路から児童公園へ上る小さい階段のあたりにあって、耳神様とも言われていました。
耳だれは割合よくあった病気です。多く中耳炎で、こじらせると聞こえなくなることもありましたから、村の人々は耳だれになると一所懸命でこの耳んだれ様にお参りをしました。治ると斜めに切った竹筒にお酒を入れ、麻で縛って供えるのでいつも何本かの竹筒が下がっていたものです。次にお参りする人はこの竹筒をいただいて帰り、耳につけることもあったそうです。
昭和のはじめ、おばあさんに連れられてお参りしたことのある人の話では、小さい木のお宮の中に幣束(へいそく)が一本、おまつりしてあったそうです。また「高さ四、五十センチメートルの石が入っていたと思う」という人もあります。
児童公園に整備され、あたりの様子がすっかり変った今ではこの耳神様のゆくえを知ることも難(むずか)しくなってしまいました。(p39~40)