22辻しようげ
Y字形の三角辻には悪い神様がたくさん集まっていて、通る人やそこに住む人になにかとわるさをするものだ、と昔から言われていました。これを「辻しようげ」と言っていました。ですから三角辻は利用価値が低く、たいていは石仏、石塔などが建っていたり、捨て場になったりしたものでした。
一年間の厄払いをした幣束やご用済のお札が捨てられていて、風雨にたたかれてとけかかり、なにやら陰湿な雰囲気をかもし出していました。夕暮時の辻はことさらにうす気味悪く恐しいものでした。
「辻しようげにたかられるといけないから、辻は足早に通りなさい」
と常日頃、母親にいわれているので子供達は、たかられないうちにと目をつぶって一目散に駆けぬけました。それでも運が悪いのか、神様の気に入られたのか、中には「しようげ」にたかられて虫を起したような状態になって、親をびっくり仰天させたものでした。
五日市に、たかった「しようげ」を抜いてくれる人がいましたので、そんな時は早速、自転車の荷掛に子供を乗せて連れていきました。三十代の男の人で、特に祈祷を職業としているわけではないのですが、効き目がると評判でした。数珠(じゅず)をかけて何やら云いながら拝むと不思議に「しょうげ」が抜けて、また元気な子供に戻ったものでした。(『東大和のよもやまばなし』p47~48)