前田耕地遺跡

前田耕地遺跡

多摩川流域の古代史 p9


 あきる野市の「前田耕地遺跡」では、縄文時代草創期(約 1 4,0005,000 年ぐらい前)の土器が出てくる住居址の中から、大量のサケの歯が出てきて、多摩川上流の秋川でサケ漁をしていたと考えられます。これが日本で最古の漁労の証拠ではないかと思います。


あきる野市解説

 前田耕地遺跡は、多摩川支流の秋川と平井川に挟まれた段丘上に位置し、昭和51年から59年まで発掘調査が行なわれました。この調査で縄文時代草創期(約13000年前)から古代に至る集落跡が確認されました。とりわけ、草創期に属する2軒の住居跡は、この時期に属する住居跡としては我が国での最初の発見例として注目されました。そのうち1軒の住居跡からは、クマなどの動物骨とともに、サケ科魚類の顎歯が約8000点出土しました。これは、日本列島における最古の河川漁撈活動を示す考古資料となっています。また、河原に豊富にある良質のチャートを石材とし、石槍などを大量に製作した際に生じた石の破片のまとまりが6か所発見されました。
 なお、本遺跡の北東300mには、同時期における秋川流域の拠点的集落であったと考えられる二宮森腰遺跡が所在し、本遺跡との間で交互に居住が繰り返されてきたことが判明しています。
 前田耕地遺跡は縄文時代草創期の食糧獲得活動や石器製作技法を具体的に知ることのできる貴重な遺跡であることから、一部が保存され、前田公園として開放されています。