合併反対
東京府北多摩郡高木村外五ケ村組合存置事由書
一、組合村長は其村々の協議に依らず府知事を欺き合併をヲ上申シタル事
郡長は自ら組合役場に出張し合併の協議成立せざるを知りながら村
長が虚偽の上申を幇助し知事に諮問を請求し村長が各村会及組合会
へ知事の諮問に対し答申の意見を聞かざるに先ち密かに郡参事会の同
意を求め之を答申し各村議員が陳情するも都で之を秘密に爲せし事
知事にして仮に村長が上申に依らずして町村制第四条一項の町村
分合を要するものと認めたるものとするも町村制施行の際合併の協
議行届かず即ち町村制第百十六條二項の場合なる組合制は三多摩郡
中数十ヶ村あるに独り我組合に向テ合同を強行せんとし調和を欠く
に至るは明治二十一度四月十七日の聖勅即ち隣保団結の旧慣を
尊重し云々に背戻せざるや
一 村長が本年六月十四日該件に対し藏敷村会の決議を執行せざるは不
法処分なる事明白なるに郡長は之を知るも匡正せしめず議員が之を
訴るも監督権を執行せず四ケ月の今日に至るも其職責を盡さざるも
のにして第二次の監督官へ告知するも亦知らざるものの如し今や第
三次の最上監督庁を煩わすの止むを得らざるに至らしめたるは知事の怠
慢に非るか
一 輓近(ばんきん 最近)郡長が非合併者に向て曰く町村制第四條三項に法律上ノ義務を
負担するに堪えず又は公盆上の必要あるきは関係者の異議に拘らず
町村を合併し云々とあれば法律上合併せしめらると如何に行政官が
專横を逞するに町村制第百十六條一項により組合を設置し共同処分
するものには適用すべからざるは論を俟たず故に之を駁すの要なし
以上の事由により組合村に連署して以て合村議案の撤回を請願した
れば左に之を付し且つ証拠書類を添え府参事會員諸君の参考に資し各
村自治体の安全を企図す
明治三十四年九月十日 北多摩郡高木村組合非合併陳情委員頓首